レアな博物館を住宅街で発見「エスペラント博物館よこはま」横浜市

神奈川近郊お出かけ情報

京浜急行井土ヶ谷駅から弘明寺駅間に向かう途中、電車の中から見つけた看板。「エスペラント博物館よこはま」。

エスペラントって知っていますか?エスペラント語とは、1887年にポーランド出身のザメンホフという人が国を問わず共通して使える言語を目指して作成された言語なんです。

エスペラント語は、2022年ワールドカップカタール大会で使われた公式球にもアラビア語・英語・中国語・フランス語・スペイン語とともに、記載されていたそう。

エスペラントに関する書物が展示されている博物館へ行ってきました。

エスペラントとは?

エスペラントは、1887年、ザメンホフという青年が、「ことばの違いや民族間の対立を乗り越えて、世界中の人々が自由平等に、そして平和にコミュニケーションできたら!」という希望を込めて作った言語だそう。

ユダヤ人のザメンホフは、1859年にポーランドで生まれました。子どものころ、相手がユダヤ人であるとか、ドイツ人、ポーランド人、ロシア人であることが原因で日々喧嘩が起きているのを目にしていたといいます。

宗教や人種の違いを超えて「みんなが同じ言葉を話して、分かり合えばきっと仲良くなるはずだ」と思い「共通のことば」を作ろうと思い立ったと『地球時代のこどばエスペラント』(著者:土居千恵子 日本エスペラント図書刊行会出版)に書いてありました。

エスペラント博物館よこはまってどんなところ?

ワールドカップ公式球にも記載されるようなエスペラント。しかし、一般的にはあまり知られていないのではないでしょうか。

そんなエスペラント語の書籍やエスペラント所縁のものを集めて展示しているのが、今回訪れたエスペラント博物館です。

【エスペラント博物館よこはま】
神奈川県横浜市南区永田東1-19-1
アクセス:京浜急行井土ヶ谷駅徒歩5分(詳しい道案内は公式サイトに掲載されています)
開館日:毎日13-16時※事前問合せがおすすめ
公式サイト
問合せ先フォーム

今回、私は前日に連絡してからうかがいました。入口は一見すると民家の玄関のようです。博物館用のインターホンを鳴らして入館しました。

左が博物館用のインターフォン

入ってみると、一軒家の1階と2階がすべて展示室となっていました。 個人宅の1室を展示室として利用していると想像していたのですが、思いのほか展示数が多そうです。

まず運営事務局長のドイヒロカズさんから、 「このあとお時間はどのくらい大丈夫ですか」と私の予定を確認する質問が。

来館者の都合により、案内を変えてくれる心遣いがうれしい。私は、この日、他の予定がなかったため、じっくりと案内してもらいました。

もちろん、短い時間で自由に回覧することも可能です。

手書きのイラストがかわいい館内図

ドイさんがエスペラント語と出会いは中学生のころだそうです。

たまたま読んでいた百科事典で「エスペラント語」の項目を目にしたことがきっかけだったと教えてくれました。

ちょうど英語の学習に壁を感じていたころで、「独学で身につけやすい」特徴に興味をもったとか。その機能性にひかれて学び始めたそうです。 エスペラント語の参考書や翻訳本を出版されている奥さまとも、エスペラント語がきっかけで出会われたといいます。

展示されていたロシアの楽器バラライカを持つドイさん

展示室案内|宮沢賢治も学んだエスペラントの世界

まずは1階展示室から案内していただきました。

入口すぐには、子ども向けに書かれたエスペラント語の絵本や児童書が展示されています。

エスペラント語に翻訳されたさまざまな国の絵本 特に中国の絵本が多かった

新渡戸稲造、宮沢賢治とエスペラント

新渡戸稲造、宮沢賢治などエスペラント語に携わった人の関連書籍が置かれていました。

新渡戸稲造は、国連にエスペラント語を世界共通語にすることを提案したとか。

宮沢賢治は、世界平和を願ったエスペラントの理想に共鳴して、エスペラントを独習したそう。

歴史上の著名人がエスペラント語を学習していたとは、まったく知りませんでした。

宮沢賢治の特集コーナー 『セロ弾きのゴーシュ』のエスペラント語版も展示

全国から集められたエスペラント会報誌

日本国内および世界各地のエスペラント語支部の会報誌の展示。ドイさんに支部の数をたずねましたが、日本各地に多くの支部があるため、正確な数は把握できていないとのこと。

展示されている会報誌をざっと数えるだけで、多くの支部がある様子。展示されている会報誌だけでも北海道から岩手、山形、福島、川崎、大阪、神戸、 愛媛、宮崎ほか19地域にわたります。

ゲームの世界にもエスペラントが

なんとエスペラント語を使ったパソコン用ゲームも出ていたとか。 「ことのはアムリラート」というゲームです。架空の世界を題材にしたゲームのため、国を超えて使われているエスペラントが選ばれたようです。

パソコンゲーム「ことのはアムリラート」(現在は製造中止)のパンフレット展示

世界各国の言葉で書かれたエスペラント語に関する書籍 (貸出可) や、毎年で行われている世界エスペラント大会の写真の展示もありました。

展示の写真撮影も事務局長のドイさんが撮影

運営事務局長に聞く エスペラントの魅力

1887年にザメンホフによって作られたあと、エスペラント語はザメンホフが予想していたよりずっと短い期間で、世に広まったといいます。

新しく作られた言語が、なぜ世の人にすんなり受け入れられたのか。その理由を聞いてみました。

ーーエスペラント語が発表されて間もなく、東ヨーロッパ地域を中心に受け入れられたのは、なぜですか。 世界でまだ「共通語」「公用語」 の概念がない時代だったから?

ドイさん「それもあるかもしれません。ですが、国境を越えたら言葉が通じずに困る事情があったり、さらには同じ村の中ですら民族の違いにより言葉が通じない状況があったのではないでしょうか。だから共通して使えるエスペラント語が受け入れられたのだと想像しています」

準備中の企画 聖書や水滸伝など世界の名著のエスペラント語版を集めたコーナー

さらに、エスペラント語の魅力について聞いてみると―――

ドイさん「エスペラント語は生まれながらに母語として使用する言語ではなく、自ら学習して身につける言語です。どんな人もゼロからスタートして学ぶ言語という公平性にも惹かれました。それと構造がシンプルで習得しやすいのも魅力です」

奥さまの土居智江子さんが執筆された書籍

ドイさん「先日は、エスペラント語をきっ かけに交流しているベトナム人の方の結婚式に招待されて、ハノイを訪れました。 エスペラント語を使うことで世界の人たちとつながりをもつことができました。 多くの人 にエスペラントの良さを知ってもらいたいです」

さいごに

エスペラントの知識を全く持たずに訪れた私でしたが、エスペラントの世界の広さを知ることができました。

  • 文法が機能的で勉強しやすいこと(例えば名詞の語尾は-o、形容詞は-a、動詞の現在形の語尾は-asと明確なルールが決まっている)
  • 宮沢賢治、二葉亭四迷、梅棹忠雄など著名な人がエスペラントを学んでいたこと
  • 世界中にエスペラントを学ぶ人たちがいて、強いネットワークがあること

ドイさんにお話を聞いていると、穏やかながらも芯のあるエスペラントへの愛情が伝わってきて、それほどまでに人を惹きつけるエスペラントというものに興味がわきました。

エスペラント博物館は、エスペラントのことを知らない人でも、エスペラントの奥深さを知ることができる場所だと感じました。博物館を訪れる際はぜひ時間をゆっくり設けて、ドイさんにエスペラントについていろいろ質問してみることをおすすめします。

ふらりと立ち寄った博物館で、新しい世界を教えてもらいました。

施設情報

【エスペラント博物館よこはま】

神奈川県横浜市南区永田東1-19-1
アクセス:京浜急行井土ヶ谷駅徒歩5分(詳しい道案内は公式サイトに掲載されています)

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